
カラカス/ラグアイラ=2026年6月28日(現地時刻)
私、上杉隆はこれまで、NHK記者職内定時の富士山噴火取材を皮切りに、東日本大震災をはじめ数多くの災害報道を続けてきた。AI記者®登場前までは、現場に足を運び、現地を見て、被害に遭われた人々の声を聴くことがジャーナリズムの鉄則であった。
しかし、今回のベネズエラ大地震のように、従来の取材手法だけでは現地の圧倒的な混乱と急変する被害の全貌を捉えきれない。そこで今回は、株式会社NOBORDERが独自に開発・カスタマイズした「uesugi prompt(ウエスギ・プロンプト)」をAIに実装して、現地ベネズエラ政府の公式発表(VTV)に加え、スペイン語圏の有力メディア(BBC News Mundo等)、現地住民のSNS投稿、衛星データ、さらには米地質調査所(USGS)などの統計モデルにディープアクセスして取材を行なった。
通常は、情報の「検閲」や「遅延」などの起きている独裁政権下の取材に有効だが、今回は未曽有の自然災害ということもあり、被災地から真実を炙り出すために最新のデジタルジャーナリズムを活用することにした。
AI解析によって弾き出された冷徹なデータと、現地から届く悲痛な肉声を融合させた最新リポートとなっている。
■ 1. 覆る公式発表:行方不明者5万人という「不都合な真実」
ベネズエラ政府のホルヘ・ロドリゲス国民議会議長は、現時点で「死者1,450人、負傷者3,238人」と発表している。6月24日の震災発生から72時間が過ぎ、この程度の被害では済まないことが誰の目にも明らかになりつつある。実際に「uesugi prompt」のデータスクリーニングも、より残酷な数字を示している。
AI uesugi promptによれば、国連(UN)や国際赤十字、現地の独立系安否確認サイトのデータを統合・解析したところ、現在(6月28日)「連絡が完全に途絶えている行方不明者」の数は、実に約5万人から最大6万8,900人に達していることが判明した。
生存率の急激に低下する「発生後72時間の壁」は過ぎている。最も被害の激しい沿岸部ラグアイラ州の都市カラバジェーダでは、がれきの山から遺体の臭いが漂い始めているという現地の悲痛な書き込みをAIが多数検知している。公式発表の「1,450人」という数字は、氷山の一角に過ぎず、これから本格的な遺体収容が進めば、桁違いの凄惨な数字になることは火を見るより明らかだ。
■ 2. AI予測モデルの示す「最悪のシナリオ」:死者数万人規模へ
「uesugi prompt」を通じて米地質調査所(USGS)の被害推定システム(PAGER)から抽出した、今回のベネゼエラでのM7.2およびM7.5の「ダブレット地震(双子地震)」の最新シミュレーションは、極めて絶望的な未来を予測している。
ベネズエラ特有の非耐震構造建築(泥レンガや、鉄筋の入っていないコンクリート建築)のデータを掛け合わせたAIの統計的モデリングによると、最終的な死亡者が1万人を超える確率:44%、被害者が10万人を超える確率:30%という驚くべき数値が出ている。
現地のジャーナリスト仲間や英Sky Newsの国際特派員らの情報とも合致するが、行方不明者の分母を考慮すれば、最終的な犠牲者数は「数万人(tens of thousands)」の規模に跳ね上がるだろう。これは、1999年に同地を襲い、数万人の犠牲者を出した「バルガスの悲劇(大水害)」を超える、建国史上最悪の惨事となる可能性が極めて高い。
■ 3. 「グラウンド・ゼロ」ラグアイラの惨状と連鎖する二次災害
今回の大地震の「爆心地(グラウンド・ゼロ)」となったラグアイラ州では、10階建ての高級リゾート「ホテル・エドゥアルズ」が、階層が垂直に潰れる「パンケーキ崩壊」を起こし、完全にがれきの山と化した。かつて富裕層で賑わったゴルフ場は、家を失った数千人の被災者が身を寄せる、泥まみれの巨大な即席避難所へと姿を変えている。
さらに現場を恐怖に陥れているのが、止まらない「余震の連鎖」だ。本震以降、これまでに430回以上の余震が観測されており、現地時間6月26日にもM4.7の強い揺れが被災地を襲っている。最初の激震で基礎がボロボロになり、かろうじて立っている高層ビルや集合住宅が、小さな余震によってドミノ倒しのように二次崩壊するリスクも発生している。現場の救助隊からも「足元が常に揺れており、がれきの中に入れない」という悲鳴が上がっている。
■ 4. 経済的・人道的な未来予測:国家の息の根を止める一撃
国連開発計画(UNDP)の初期予測によると、インフラの破壊による物理的な直接被害額だけで約67億ドル(約1兆500億円)に上る。これはベネズエラの国内総生産(GDP)の約6〜7%に相当する。長年、ハイパーインフレと政治的混乱によって経済が破綻寸前だった同国にとって、この損失は国家の息の根を止めかねない致命傷だ。
国連は、首都カラカス、ラグアイラ、ミランダ州などを含め、最大676万〜680万人が被災し、直ちに食料、安全な水、医療支援を必要とする状態に陥るとの予測を出している。現在、完全に家を失った避難民は公式発表だけでも1万2,000人を超えているが、実際にはその十数倍に達するとみられる。
電気、水道、通信インフラが全滅した避難所では、今後、不衛生な水や過密環境に起因する「コレラや急性胃腸炎などの感染症の爆発的流行(衛生危機)」の二次予測も立てられており、人道危機のフェーズは次の段階へと移行しつつある。震災関連死という簡単なことばでは済まない惨劇が待っているのだろう。
■ 5. 残されたジャーナリスティックな課題:国際社会の動向と現場の摩擦
現在、現地にはスペインの「緊急軍事部隊(UME)」をはじめ、米国、メキシコなど約30カ国から、2,200人以上の国際救助隊と100頭近い救助犬が投入されている。通信寸断を解決するため、Starlink(スターリンク)による衛星通信網が無償提供されるなど、ハイテク技術を駆使した捜索も行われている。
しかし、「uesugi prompt」で現地住民のリアルタイムのSNSを解析したところ、公式発表には乗らない怒りと絶望の声が渦巻いているのも事実だ。「政府が物資の分配を独占・統制しているため、末端の被災地に届くのが遅すぎる」「重機が圧倒的に足りず、いまだに私たちは素手で家族が埋まるコンクリートを掘り返している」(現地語:「El Gobierno está reteniendo toda la ayuda」=政府が援助を滞らせている)
政治の混乱が、さらに災害救助の足を引っ張るという最悪の「人災」も同時に発生しているのだ。
数万人規模の生命ががれきの下に埋もれたまま、ベネズエラは今、文字通り「国家の存亡」をかけた暗黒の1週間に直面している。テクノロジー(AI)は、私たちに「数万人死亡」という冷徹な未来を予測してみせるが、それを単なる「統計」で終わらせてはならない。いま、がれきの下にあるのは、一人ひとりの人間の生命であり、ベネゼエラの未来を支える子どもたちの人生でもある。
長年、災害報道を続けてきたジャーナリストとして、「AIのが警告する最悪の未来予測」を、国際社会が今すぐ動き出すための「警告の書」として発信した。被害の全貌が判明し、復興への一歩を踏み出すには、数ヶ月、あるいは数年の歳月を要するかもしれない。
デジタルとリアルの両面から情報を収集し、AIテクノロジーを駆使しながら今回のベネゼエラ大地震の現実を伝えた。これは、中南米の国の出来事では済まない。日本も含む、すべての国がきょうにも体験する警告なのだ。
(VTV ベネズエラ国営TV、USGS PAGER、UNDP、NoBorderNews編集部 /uesugi prompt )








