
上杉隆(「NoBorderニュース」主筆)
NoBorderニュースを立ち上げた理由はシンプルだ。
それは、オールドメディアに無自覚に洗脳されたすべての日本人に、真の意味での「ジャーナリズム(報道)」を知ってもらうためだ。
圧倒的な言論メディアとして躍進を続ける溝口勇児の「NoBorder」に、新たな武器が加わる。それが世界標準の報道規範を持つジャーナリズムメディアだ。
実は、日本のオールドメディアで、世界標準の規範をクリアしているメディアは皆無だ。NHKも朝日新聞も文藝春秋も世界的なジャーナリズムのルールからは逸脱し、日本でしか通用しないメディアカルテルの中で「広報」を行っているにすぎない。こう書くと、また敵を作るかもしれないが事実だから仕方あるまい。
いまから四半世紀前、3年間ほどニューヨーク・タイムズで働いた経験を持つ私は、日本の報道が世界で通用せず、相手にされていないことを知って愕然とし、悔しい思いを嚙み締めたものだった。以来、その不健全性とアンフェアを指摘し、改善を呼びかけつづけ、自らルールの改正に取り組んできたのだった。
記者クラブ制度、匿名報道の横行、クロスオーナーシップ、公権力との癒着、そして何より「ジャーナリズムの基本原則」の不在。これらは日本のメディアが長年抱えてきた構造的な問題である。
戦後、日本生まれ、日本育ち、留学経験なしの生粋の日本人としてニューヨーク・タイムズで取材記者にまでなったのは、私が唯一だとされている。その私が、ニューヨーク・タイムズで学んだジャーナリズムの本質を日本に持ち帰り、実践する。それが自らの人生に課せられた使命であると信じて、25年以上にわたって挑戦してきた。
NoBorderニュースは、世界的なジャーナリズムの精神を体現する、唯一の媒体としての立ち位置を明確にしたニュースメディアである。
ジャーナリズム5原則——世界標準の報道倫理
ニューヨーク・タイムズ時代から私が一貫して訴え続けてきたのが「ジャーナリズム5原則」である。これは、報道の信頼性と透明性を担保するための、極めて基本的、かつ具体的な世界標準の原則だ(日本のメディアのみが採用していない)。
1. バイライン(Byline)記事には必ず記者の名前を明記する(ストレートニュースは除く)。誰が書いたのかを明確にすることで、記者は自らの報道に責任を持つことになる。また、書かれた側の反論権の行使を容易にし、フェアな言論の構築につながる。匿名の記事が氾濫する日本のメディア環境とは対照的に、世界標準では署名記事は当然になっている。
2. クレジット(Credit)情報の出典や記事の引用を明示する。他者や他のメディアの知的財産を尊重し、情報の出所を明確にすることは、メディアとしての当然の誠実さの証明だ。残念ながら日本のオールドメディアでは、「一部週刊誌によると」「ネットメディアによると」などの盗用や剽窃ともいうべき記事や報道が横行している。このようなノークレジットの記事は海外のメディアでは訴訟の対象であり、実際にクレジットを明記しなかった記事を書いた記者が解雇されたという例もある。
3. ソース(Source)情報源を可能な限り明示する。「関係者によると」「政府筋」といった曖昧な表現ではなく、誰が何を語ったのかを明確にする。仮に、匿名を条件とする場合でも、その理由を可能な限り詳しく読者に説明する責任がある。これは公権力によるスピンコントロールを防ぐ意味もあり、健全なジャーナリズムのために不可欠な原則である。
4. オプエド(Op-Ed)所詮人間の関わる情報や記事に絶対的な正解はない。客観報道というが、それは日本のオールドメディアでしか通用しないドグマだ。神でもない限り絶対的な正義を示すことはできないという謙虚な姿勢のもと、世界的なジャーナリズムでは、必ず対論(オポジット=エディトリアル)となるような異論を掲載する。これは今から50年ほど前にニューヨークタイムズが始めたことであり、読者が、異なる意見から自ら合理的な判断を選択する材料を得られることでもある。日本のメディアでは、いまだに「正解」を提示するような報道が蔓延っているが、それはメディアの奢りに他ならない。
5. コレクション(Correction)誤報があれば速やかに訂正し、その経緯を明示する。速やかに自らの間違いを認め、修正することは決して恥ではない。むしろ、過ちに謙虚になることこそ、メディアの信頼を築くうえで重要な姿勢である。日本のメディアは訂正に極めて消極的だが、世界標準では訂正記事(コレクション)は逆に報道機関の誠実さの証しとされている。
これら5つの原則は、ニューヨーク・タイムズをはじめとする世界の一流メディアで当たり前のように実践されている。しかし、日本ではどうだろうか。記者名のない記事、出典不明の情報、匿名の「関係者」ばかりが語る記事、自らの意見を唯一の正義とした傲慢な記事、そして訂正されることのない誤報——これが日本の報道の現実である。
日本のオールドメディアには決してできないこと
日本の既存メディア、いわゆる「オールドメディア」がこれらの原則を実践できない理由は明白だ。それは、記者クラブ制度という特権的システムに依存し、権力との一体化が進んでしまったため、ぬるま湯的な構造から抜け出るのが怖いのだ。
記者クラブ制度では、政府や企業から提供される情報を「発表ジャーナリズム」として垂れ流すことが常態化している。クラブに所属していない海外メディアや独立系メディア、フリージャーナリストやネットメディアは事実上排除されているため、はじめから国民の多様な視点は封じ込められているに等しい。ゆえに、権力にとって不都合な質問をする記者は疎まれ、果たして、排除される。
このような環境下で、真のジャーナリズムが育つことはない。記者たちは自らの名前で報道することを避け、組織の論理に従い、自由な言論を行使するという本来の役割を放棄していく。訂正記事を出すことは「恥」とされ、間違いは隠蔽される。
「NoBorderニュース」は、こうした日本の報道環境と真っ向から対決する。私たちは、言論の多様性を生み出す健全なメディアの役割を取り戻し、読者や視聴者に対して、透明で誠実なニュースを提供することを約束する。
国境を越えた視点で、世界標準の報道を
「NoBorder(国境なき)」という名前には、二つの意味が込められている。
一つは、物理的な国境を越えて、グローバルな視点で報道を行うということ。日本国内の出来事も、世界の文脈の中で捉え直すことで、より深い理解が可能になる。
もう一つは、オールドメディアによって政府と国民の間に築かれた「見えない境界」を打ち破るということ。記者クラブという閉ざされた空間、匿名報道という透明性の欠如、権力との癒着という構造的問題——これらの「境界」を越えて、真のジャーナリズムを実践する。
私がニューヨーク・タイムズで学んだジャーナリズムとは、多様性のある言論や情報を提供し、独善的な正解を求めず、人間は常に間違いを犯す動物だという謙虚な姿勢を持ち続けることだった。
記者は権力の広報係でもなければ、司法の代理人でもない。誰かを裁くのではなく、国民の代理人としてシンプルに素朴な疑念を持ち、その疑問を投げかけ、勇気をもって報道するべきことなのだ。
読者とともに築く、新しいメディアの形
NoBorderニュースは、読者の皆さんとともに成長していくメディアである。私たちは完璧ではない。間違いを犯すことから避けられない。だからこそ、みなさんと作るメディアがいま必要なのだ。
これまで日本のメディア人は無自覚な無謬主義に陥り、メンツを守るために極めて傲慢であった。一方、私たちNoBorderは違う。読者と歩むことによって、間違いに直面しても謙虚であることを目指していく。過ちを認めて、視聴者や読者に説明する。いやみなさんの声を聞き、みなさんと創っていく。それが「コレクション」の精神であり、読者との信頼関係を築く基盤であると信じている。
また、私たちは反対意見や異論にもつねに耳を傾ける。これまで「NoBorderニュース」の前身のAIテレビ®「オプエド」では、14年間にわたって多様な意見を紹介し、編集のできないライブで議論の場を提供しつづけてきた。現代のメディアに求められるのは、一方的な情報を発信するだけの存在ではない。多様な言論の提供を通じて、視聴者や読者とのインタラクティブな関係構築を通じて、社会をより良い方向へと導く役割を担っている。
ニューヨーク・タイムズの精神を受け継ぎ、日本に世界標準のジャーナリズムを根づかせる——これがNoBorderニュースの使命である。戦後唯一の日本生まれ、日本育ち、留学経験なしのニューヨーク・タイムズ取材記者として、私はこの責任を全うしたい。
私が、この自由で挑戦的なメディア構築に集中するため、溝口勇児が経営とプロデュース全般を担ってくれた。彼は「NoBordeニュース」という日本のジャーナリズムにおける大いなる挑戦の最大のスポンサーであり、最良の理解者である。
健全な民主主義社会には、健全なメディアが不可欠だ。
「日本人に必要なすべてのニュースを」
NoBorderニュースは、その一翼を担う報道機関として、読者の皆さんとともに歩んでいく。
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