
上杉隆(ジャーナリスト・NoBorderニュース編集主幹)
年の瀬も押し迫った12月、配信された2025年最後の『NoBorder』の議論のテーマは「敗戦国という洗脳──戦後日本に仕組まれた自虐史観の恐怖」であった。
溝口勇児MCのもと、政治学者の岩田温氏、政治家の河合ゆうすけ氏、国史啓蒙家の小名木善行氏、政治学者の白井聡氏、映画監督の水島総氏、そして私上杉隆という論陣で進行し、約50分にわたる討論が展開された。『全裸監督』の村西とおる氏もゲストMCとして加わり、時に笑いを誘いつつも、戦後日本の根幹に関わる問題に真摯に向き合う姿勢を見せた。
筆者と水島総氏との関係についてまず触れておきたい。水島氏の『日本文化チャンネル桜』と私上杉の『NOBORDER NEWS TOKYO』は、まだ日本にネットの報道番組がなかった頃にそれぞれ立ち上げた数少ないメディアであった。出会ったのは25年以上前、靖国神社取材が最初だが(その後、毎年この時期に出演するようになった)、お互いの番組に呼びあうようになったのは15年以上前のことだった。
当時、独立系の報道メディアは5指にも満たず、もっとも古いメディア創業者の先駆として、四方八方から矢のごとく飛んでくる誹謗中傷に立ち向かう中、私は水島氏を勝手に「先輩」であり「同志」であるとみていた。当時はTwitterやfacebookなどのSNSも存在しない時代(2005年頃)で、テレビ局の力は圧倒的、水島氏と上杉は危険人物というレッテルを貼られ、数々の番組からパージされたはじめた時期でもあった。
とはいうものの、水島氏とニューヨークタイムズ出身の私上杉では、思想的には異なる立場を取ることも多かった。しかし、そのような中でも、水島氏は『チャンネル桜』の番組に、「この人(上杉)は思想は私たちと違うんですが、物おじせず、フェアに堂々と語るところを、私はとても評価しているんです」と頻繁に呼んでくれたものだった。
一方で、記者クラブを中核としたオールドメディアのカルテルを打破し、多様な言論空間を作るという理想において、水島氏と私は完全に方向性が一致していた。今回の討論でも、意見の対立を恐れず、水島氏と激論する場面があったが、そこにはゆるぎない水島氏への敬意があり、批判を恐れずに自由な議論を許すフェアな相手だという安心感があったものだった。
自虐史観の起源と影響
さて、番組に戻ろう。本編において討論の口火を切ったのは岩田温氏だった。岩田氏は2024年に出版されたブライアン・リッグ氏(米国歴史家/ドイツ専門)による著書『ジャパンズ・ホロコースト』を取り上げ、「日本軍が3000万人以上を虐殺し、ナチスドイツよりも残虐だった」という主張を紹介した。岩田氏はこれを「でったらめな話」と一蹴し、「ヒトラー、ムッソリーニと昭和天皇を同列に並べるなんて馬鹿な話はない」と憤りを露わにした。
岩田氏の指摘は重要である。2022年、ウクライナ政府の公式SNSに投稿された動画では、プーチン大統領を批判する文脈で、ヒトラー、ムッソリーニと並んで昭和天皇の姿が含まれていた。日本人にとっては衝撃的な事態だったが、世界的には「枢軸国の指導者」として認識されているという現実を改めて突きつけられたにすぎない。これが世界の共通の価値観なのだ。
私はこの点について、日本政府の姿勢に問題があるとして次のように指摘した。「昭和天皇が犯罪者なのか、犯罪者じゃないのか。日本が国として決めて明確に主張すべきだ。何も言わないから、世界中から『認めたんだな』と思われている」。
たとえば、戦後ドイツが日米地位協定に相当する独米地位協定を何十回も改定しているのに対し、日本は制定以来、事実上一度も変更していない。この事実が、戦後日本の「自虐史観」を誘発しているというのは言い過ぎであろうか
教育現場における影響
河合ゆうすけ氏は、自虐史観の最大の弊害として「若者が愛国心を持てない」ことを挙げた。防衛省監修の雑誌『守る』が実施したZ世代へのアンケートでは、「日本が侵略された場合に戦いますか」という質問に対し、71.8%が「戦わない」と回答したという。この数字こそ、戦後教育の歪みを如実に示していると河合氏はいう。
さらに河合氏は従軍慰安婦問題を例に挙げた。作家・吉田清治の証言を基にした朝日新聞の記事が、韓国の反日感情を煽る大きな要因となったとし、後に朝日新聞自身が「虚偽であった」と認めて謝罪してもなお、その論調は消えていないという。現在も慰安婦問題は教科書に掲載され、学校教育で教えられ続けており、天皇制を否定する「はだしのゲン」のような作品が全国の図書館に並べられている現状も問題だと彼は指摘する。
米国との関係をめぐる対立
番組中、議論が白熱したのは、米国との関係をどう捉えるかという点だった。政治学者の白井聡氏は、自虐史観の根源は米国にあり、それを支持する「親米保守」とされる日本側にも責任があると批判した。「東京裁判史観、けしからんと言うけれども、東京裁判史観って誰ですか? アメリカですよね」と問い、靖国問題も究極的には米国と衝突する話だと指摘している。
これに対し岩田氏や河合氏は、現実的な国際情勢を考慮すべきだと反論した。かつては共産主義という脅威と対峙しなければならない現実があったのは事実だ。一方、現在は中国というおかしな国が存在する以上、米国との同盟は必要だとも異口同音に語った。靖国神社参拝についても「他国にとやかく言われる必要はない。内政干渉だ」と主張する。
ここで保守論壇の重鎮である水島総氏が意外な形で議論に割って入った。「私は白井さんの立場に合いますよ」と前置きし、「米国こそひどくないのか。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争と世界中で戦争を起こし、イラク戦争では200万人ものイラク人を殺している。トランプ大統領は小泉防衛大臣を使って40兆円を使わせようとしている。財源がないと言いながら、83兆円も米国に投資させる。ウクライナに3兆円も送る。日本の国民のために使うべき税金ではないのか」と訴えた。そして、水島氏は「現実論から言ったら属国なんですよ、日本は属国です。アメリカの」と断言した。
岩田氏は「それを認めた上で、どうやって独立していくかを考えなくちゃいけない」と応じ、白井氏は「親米保守派は日米同盟を永久に続ける理屈を探すのが仕事だ」と厳しく批判する。議論が面白いのは予定調和が崩れたまさにこういう時だ。左右入り乱れての応酬に対し、筆者も、水島氏の指摘を評価して、「悔しいけども、属国だということを認めないと、次にどうするかが出てこない」と付け加えた。
この議論の流れで、村西とおる氏は自身の世代の経験を語った。「私の世代では、まだ進駐軍が駅前にいた頃だ。『ギブ・ミー・チョコレート』と言った世代だ。親父の兄弟三人が戦争で死んだ。だから格闘技の試合で力道山が米国選手と対戦するときは、家中大騒ぎで『やっつけろ』と応援したものだった。その上で村西氏は「我々日本人は泣きながら生きていかなきゃいけないという現実がある。負けているからね。これは仕方がない。ただ泣きながら米国と手を組んで、頑張らなきゃしょうがないでしょう」と現実主義的な見解を示した。
脱却への道筋
討論の後半では、自虐史観からどう脱却するかが議論された。私は「教育とメディアを変えれば一発で変わる」と主張し、とくにメディアの役割の重要性を強調する証左としてこう発言した。
「水島さんも私も、中国から暗殺命令が出ているが、事実上、日本のメディアからその事実を黙殺されている。日本のメディア、とくに霞クラブのチャイナスクールでは、当時『水島とか上杉を絶対(番組に)出すな』と指示が回っていたものでした。つまり、日本に自虐史観を植え付けているのは日本のメディア自身なのです」。
水島氏と私は、独立系のメディアを作った直後からメディアカルテルによってテレビから排除されてきた。ふたりともテレビの作り手として支えてきたにも関わらずだ。多様な言論を担保することが、自虐史観からの脱却の近道であることを考えらば、テレビのやり口はその流れと逆行する不誠実な振る舞いではないか。
白井氏は独自の視点を提示した。「自虐史観と自慰史観はワンセットになっている。都合の悪いことは全部なかったことにして気持ちよくなりたいというのが自慰史観だ。その両方から脱却しなければならない。村西さんのおっしゃった『泣きながら』という精神が大切だ。親米保守にはその涙が全く見えない」。続けて白井氏は、日本人が戦争に負けたという事実を本当のところでは認めていないため、「ずるずる、だらだら負け続けるようなことになってしまっている」と分析した。
その白井氏に対して河合氏は「なんか本当にこう、切歯的というか、ちょっとひねくれてなんか理論ばっかりお話しされているんだと僕は思っている。白井先生みたいな方が教育者でやられていて、果たして若者が本当に日本を誇らしく思うような人材が生まれてくるのか、私本当に心配ですよ」と懸念を表明した。
小名木氏は、日本人の素朴なナショナリズムに希望を見出している。鹿児島・知覧を訪れた金髪でピアスの若者3人組が、特攻隊員の遺書を見て全員泣いていたというエピソードを紹介し、「日本のために戦った人がいて、今の日本の繁栄があるんだということを、遺書をしっかり自分の目で見たら分かる。私は本当にそういう素朴な日本人のナショナリズムが、我が国を支えてくれると信じています」と語った。
さらに小名木氏は歴史認識についても言及した。「500年続いた植民地支配の中で、黒人や有色人種は猿と見なされていた。日本人も猿ですよ。でもその猿が、植民地支配に対して反旗を翻し、『俺たちも人間なんだ』と言って立ち上がってきた。日本人は猛獣に変わった。昭和20年の8月15日は終戦です。敗戦の日ではないです。日本人だけが有色人種の中で唯一、欧米列強に対して『俺たちは人間だ』と言って戦った。最後の最後まで戦って、その結果、世界中の有色人種の国々がそれぞれ独立することができた。それをやったのは間違いなく日本です。そのことについては我々誇りを持っていいと思う」。
村西氏は、台湾が中国から攻撃されない理由として、「上海を機能麻痺にするミサイルを持っている」ことを挙げ、「日本も超音速ミサイルを持てば、北京にぶち込むぞという態勢を取れる。あと5年経てば、日本は自分の道を選択する世界が開けてくる」と具体的な防衛力強化を提案した。
メディア改革と日本の未来
番組の最後、若手タレントの小島みゆ氏が「生まれた時からアメリカ大好きだったし、マックも大好きだった。そういうことを考えたことがなかった。でも知覧に行って、見たことがない世界が広がっていて、私たちよりも若い子たちが託した手紙がいっぱいあって、私たち全然そういうのに触れてきてなかったなって実感した」と率直な感想を述べた。この言葉は、戦後教育の問題点を端的に示している。
河合氏は「この番組は私は非常に大事だと思ってます。ここの討論で、どれだけ勝てるか、今若者見てるんですよ。若者がこれから30年後40年後の未来を作ります」と強調した。筆者も全く同感である。
今回の討論を通じて明らかになったのは、自虐史観の問題が単なる歴史認識の問題ではなく、教育、メディア、外交、防衛、そして日本人のアイデンティティに関わる包括的な課題だということだ。立場の違いを超えて、我々は共通の危機感を抱いている。そして、その解決の鍵は、多様な言論空間の確保にあるということも共有できた。
NoBorderは、まさにその理念を実現するために立ち上げたプロジェクトだ。既存メディアのカルテルによって封じ込められてきた声なき声を解放し、国民一人一人が真実の輪郭に迫れるようにする。それが、自虐史観からの脱却への第一歩となるはずだ。
おしらせ
この討論を見た視聴者の皆さんには、ぜひ新しくスタートしたNoBorderアプリをダウンロードしていただきたい。YouTubeのポリシー上カットせざるを得なかったシーンや、論客のアフタートークを独占配信している。また、万が一チャンネルがBANされた場合の避難先としても活用していく。所得に関係なくすべての人に情報を届けたいという溝口勇児の思いから、あえて月額課金制は取らなかった。余裕のある方は、支援という形でこのプロジェクトの仲間になっていただけたら嬉しい。
さらに、Japan is backプロジェクトも始動する。これは、NoBorderアプリ内で日本の未来を考え、意見交換をするコミュニティだ。藤井聡氏と溝口勇児の対談から生まれたアイデアで、「パブリック・インボルブメント(国民参加)」の実現を目指す。政治的決定は政治的権限を持った政府が行うが、その判断材料として国民の意見を反映させる。そして、国民側も個別利益ではなく、社会全体のことを考えて意見を述べる。この三原則を実現する場として、Japan is backプロジェクトを育てていくつもりだ。
毎週土曜夜9時からはNoBorder(溝口勇児)、毎週月曜夜7時からはNoBorder News(上杉隆)、そして毎週金曜夜9時からはNoBorder X File(西川将史)をお届けしている。チャンネル登録をして日本人のリテラシーが高まることを期待したい。
※本コラムは、2024年12月27日配信のNoBorder第27回「敗戦国という洗脳─戦後日本に仕組まれた自虐史観の恐怖」の内容を基に、上杉隆の視点から論評したものです。
【NoBorder情報】
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